カンタは、インド東部とバングラデシュに跨るベンガル地方に伝わる手仕事です。
着古した衣類を重ね、家族や子供のために、自然や神話などのモチーフを一針一針刺していく――
暮らしの中で受け継がれてきた手仕事です。
絵を描くように自由に刺していくので、刺し手の個性が自然と現れます。
カンタには「正解」がありません。
完璧ではないからこその揺らぎが、手仕事の味わいになります。
また、模様のない部分も全て縫い埋めることで、独特のシボ(生地の凹凸)が生まれ、
表情を持った新しい布へと生まれ変わります。
役目を終えた布に新たな命を吹き込みながら、願いを込めて刺す一針一針が、
静かな時間とつながっていきます。
カンタ作家・研究家の故・望月真理さんは、インドでカンタに出会い、
その後40数年間、何度も訪れながら研究し、現地のカンタと独自の世界観を融合した作品を確立されました。
また、各地でワークショップを開催し、展示を通して、日本でカンタを広める活動を続けてこられました。
望月先生亡き後も、カンタは広がり続けています。
現在では若い世代にも広がり、先生の技法を学びながらそれぞれが独自のスタイルを発展させ、
先生の「手のものは手から」という言葉の通り、新しい形へと進化し続けています。


もともと自然に惹かれていたこと――
自然からインスピレーションを得た文様、布を再生させて長く使うという考え方、
並み縫いで広がる表情。
カンタに出会ったとき、その全てがここにあると感じました。
並み縫いだからこそ自由度が高く、刺すたびに新しい可能性を発見できることも魅力です。
また、望月先生から教わったもの作りの考え方や姿勢も、大きな影響を受けた部分です。
古いカンタと望月先生の作品――
その二つを踏まえながら、私なりのカンタを目指しています。
針を持ち、一針一針刺しながら、針と糸と布と私だけの空間の中で、
内側の静けさと対話する、穏やかで豊かな時間。
自分の内側と、布に現れる針目や模様との間を行き来する、
瞑想のような時間でもあります。
布や自然が纏っているものを感じながら、カンタを通して、
見えないものをすくい取れたら、と日々刺しています。
